書類には、品名、具体的な輸入元、個数、そしてそれをどの街に運送するのかというのがまとめられていた。
 もちろん、これ自体が偽造されていた場合も考えられるので、この書類をもとに一つ一つ現場で確認しなくてはならない。
 なので、今回確認する分は、ざっと見て怪しい点はないかをチェックするのみ。

「去年と比べて変更点はありますか?」
「それなら……繊維物の品数が増えたのと、新しく取引で品目に増えた数種類の野菜の苗や種でしょうか。野菜の方は、先に都の方へ検問されてから各地に回るようにはなってますが」
「あぁ野菜については知っているわ、皇妃陛下が特に力を入れて取り組まれているから」

 そう、もともとお母さん自身が栽培関係が好きな人で、どんな土地でも育つように品種改良したり、懸け合わせて新しい品種を作り上げたりするプロジェクトを立ち上げている。
 あたし自身は興味がなかったので、“そんなものがある”という程度でしか知らないが。


「あと他に、困っている点や改善したらよい点などはありますか」

 一通りチェックし終えたエッカルト公が聞く。彼の持つ書類を見ると、既に細かく書き込みがされており、純粋に感心する。
 そう言う風にしていったらいいのか、というテクニックをまだ持たないあたしにしてみれば、彼はよくできたお手本だった。

「それは、実際に様子を見られた時にお話ししたのでもよろしいですか?」
「ええ、構いません」

 ただ、この時あたしの中で何かを感じ取った。それが何なのかは上手く口では伝えられない。
 だけど、何かしらの問題があるというのだけを僅かに感じ取っていた。