【長】黎明に輝く女王

 声を上げて笑い、こちらに聞いてくる。これはやはり若いということによる仕打ちかしら。
 でも、それを嫌だと思っても、表に出してはいけない、と言い聞かせる。

「確かに苦みもありますが、香りはよく、口の中で広がる赴き深い味だと」
「ほほぅ、なるほど……この良さが分かるとは流石です」

 よかった、大丈夫と一安心したころ、隣に座っていたイリヤもそれを一口飲み、声を出した。

「すみません、この街にはこれ以外の茶も輸入しているのですか」
「そうですね、他数種類も輸入していますが、それらは他の港からも輸入していますな。この東の国の茶だけはこの港でしか入らない珍しいものですが」
「そうですか、ありがとうございます」

 笑顔で受け答えするも、それを隣で聞くあたしとしては、それにどういう意味があるのか謎だった。


「それにこの港では、他と比べても多種多様なものを取り入れているのでしょう。中には珍しい品物もあるのでは?」

 そろそろ本題に行かなければと思い、さりげなく問いかける。

「ええ、細かな品数まで申せば100近くは入っているでしょう。この港町は主に輸入の要、入ってくるものは多々あります」
「その品目を確認しても?」

 そう言うと、長は傍に控えていた男性に向かい何かをもらうと、それをあたしの方まで持ってきた。

 4、5枚程度の書類。枚数的にはそんなに多くない。その中にその100近い品数が揃えられており、不正がないか一つ一つ確認する。
 そしてあたし一人では見逃すこともあるかもしれないので、エッカルト公と二人で確認する。そのため、彼の分の用紙も合わせてもらう。