「はじめまして、この度はようこそおいでくださいました」
「こちらこそ、お忙しい中お世話になります。セリナ・シェルヴェンです」
滅多に遣わない皇族名。それってこういう公務の時に必要になり、時には力になるものだというのを思い知る。
そして差し出された手を握り、挨拶を交わし相手を伺う。
この港町の管理を任された長というのは、その言葉のもつイメージ通りの方だった。
白いひげが似合う優しそうな老紳士であり、この街に古くから伝わるという民族衣装を身にまとい、長老といったような威厳もある。
明らかにあたしの方が年下の子ども。いくら身分で皇女とはいえ、生きた年月の差、経験の差を感じざるを得ない。
「セリナ様は……たしか此間の式典で正式に皇王陛下の後継者になられたとか。おめでとうございます」
「ありがとうございます。それにまだ“正式”というわけではないのです。あの場では皇太子として選ばれたにすぎず、立太子礼はまだなのです」
「ほぉ、そうなのですか」
長いひげをさすりながらそう答える。あたしが後嗣となることに関してはいいも悪いも言わず、それだけ。ある意味無難なところであり、何を考えているのか分からない不安もある。
それでも、今はそれが問題というわけではない。
「私は公務に関してはまだまだの若輩者でして……こちらは私の秘書を務めているエッカルト公爵、そしてこちらが、私の秘玉をもつパートナーのイリヤです」
「そうですか、よろしくおねがいします」
長の雰囲気からして、悪印象は与えていないはず。互いにいい空気で物事が進んでいる。
一通りの挨拶をし終わった後、あたしたちは用意された席へと着席し、対談することになった。
丁度タイミング良く、お茶とお菓子も用意されている。
「このお茶も、輸入してきたものですか?」
「ええ、よくお分かりに。この港町では、遠い昔から貿易で栄えてまして、その茶葉も東の国からのものです。こちらでも栽培しようにも、気候が合わずそれにより製法もこちらとは違いまして……。お若い方には、ちと苦かったでしょうか」
「こちらこそ、お忙しい中お世話になります。セリナ・シェルヴェンです」
滅多に遣わない皇族名。それってこういう公務の時に必要になり、時には力になるものだというのを思い知る。
そして差し出された手を握り、挨拶を交わし相手を伺う。
この港町の管理を任された長というのは、その言葉のもつイメージ通りの方だった。
白いひげが似合う優しそうな老紳士であり、この街に古くから伝わるという民族衣装を身にまとい、長老といったような威厳もある。
明らかにあたしの方が年下の子ども。いくら身分で皇女とはいえ、生きた年月の差、経験の差を感じざるを得ない。
「セリナ様は……たしか此間の式典で正式に皇王陛下の後継者になられたとか。おめでとうございます」
「ありがとうございます。それにまだ“正式”というわけではないのです。あの場では皇太子として選ばれたにすぎず、立太子礼はまだなのです」
「ほぉ、そうなのですか」
長いひげをさすりながらそう答える。あたしが後嗣となることに関してはいいも悪いも言わず、それだけ。ある意味無難なところであり、何を考えているのか分からない不安もある。
それでも、今はそれが問題というわけではない。
「私は公務に関してはまだまだの若輩者でして……こちらは私の秘書を務めているエッカルト公爵、そしてこちらが、私の秘玉をもつパートナーのイリヤです」
「そうですか、よろしくおねがいします」
長の雰囲気からして、悪印象は与えていないはず。互いにいい空気で物事が進んでいる。
一通りの挨拶をし終わった後、あたしたちは用意された席へと着席し、対談することになった。
丁度タイミング良く、お茶とお菓子も用意されている。
「このお茶も、輸入してきたものですか?」
「ええ、よくお分かりに。この港町では、遠い昔から貿易で栄えてまして、その茶葉も東の国からのものです。こちらでも栽培しようにも、気候が合わずそれにより製法もこちらとは違いまして……。お若い方には、ちと苦かったでしょうか」


