【長】黎明に輝く女王

 普通、食事は身分差を弁えて、あたしとイリヤだけで食べる事がほとんどだった。たまに、エッカルト公が入ることはあるにしても、騎士やメイドは必ず別室でとる。

 今回案内された広間に準備されているのは3人用である。

「今回はエッカルト公も一緒なのね」
「何か嫌な事でも?」

 嫌だという雰囲気は出していないにも関わらず、エッカルト公は何を感じ取ったのか。それは、間違っていなかった。

「いや、嫌というわけじゃなくて」

 何が嫌なのかと聞かれれば、はっきりと応えられなかった。エッカルト公が食べている時に無駄にマナーに厳しい、なんてことはないし、入らぬ話をだらだらされるというわけでもない。

 ただ……ただ一つ、欲を言うならば、イリヤと二人で会話しながら食事を取っている姿をじっと見られるのが
嫌。

 それに、もしかしたらそれもあたしが過敏にそう感じているだけかもしれない。エッカルト公には何の気もないのかもしれない。


 どう応えていいか分からず、うやむやにしていると、イリヤがぼそっと言う。

「まあセリナが考えていることで、はっきりと言わない事はどうでもいい事でしょう」

 何となく言い当てられた感が否めない。それを聞いて互いに笑い合うイリヤとエッカルト公に対してあたしは顔を顰めた。