【長】黎明に輝く女王

「ホテルまでは徒歩ですぐですので」

 この港町では、その建物が密集し合った街並み、入り組んだ道が特徴的であり、人通りも多い。そのため、街の入り口まで行くと、その先は馬車は通れないよう規制されている。
 街の皆が徒歩なのならば、あたしたちだって徒歩で行く。それがポリシーというものだ。

 先ほどの場所から離れて歩き始めても、すれ違う人たちはちらちらとこちらをみる。ただ、じっと見つめられるなんてことはないからまだよかった。


「こうやって人々の生活と市場が密着しているからこそ、利用しやすい街なんだろうね」
「確かに。家から出てすぐに買い物ができれば便利だし、働いているひとも移動が少なくて楽だよね」
「すれ違う人もいろんな人がいる。それに、そんな人たちの顔をみれば、ここがとても豊かな街だということはすぐに分かる」

 目に見えるもの、すべてを焼き付け、そのことについてイリヤと話していた。互いに興味を引く街であることに変わりはない。


 しばらくすると、目的のホテルまで辿り着いた。小さいながらも白いレンガの可愛らしい、綺麗な建物。この街では一番のホテルらしく、ここに泊まれるというだけでそのものの身分が分かるという。

 中に入れば、なお一流の意味が分かる。清潔に保たれたエントランスはよく見ると、細かな細工がいたるところにある。そして出迎えてくれたボーイたちの礼儀正しさ、品行方正な態度からも伺う事が出来る。

「ようこそおいでくださいました。昼食の準備が整っています故、広間の方へお越しください」

 さらには準備万端。丁度、日の位置も高くなり、昼食を待ちかねた頃。どんな食事がでるのかと楽しみでしかたなかった。