「やけに機嫌が良すぎて怖いんだけど」
そう言われたのは、夜、部屋に戻り寛いでいた時。訝しげにそう言い出したイリヤにあたしは嬉々として話した。
「それが公務で港町への視察に行くことになったんだけど……」
「へえ、そうなんだ。がんばって」
って、言い終わらないうちに言い切られてしまった。
そんなイリヤの反応に頬を膨らませて、言った。
「何よ、そんな風に言わなくてもいいでしょ。しかもまだ途中だし」
「じゃあ何?」
「1週間ほど滞在するんだけど、イリヤも一緒に来たらいいって言われたのよ。だから、旅行よ、旅行!」
「……仕事で行くんでしょ。なにバカンス気分になってるんだよ」
興奮気味のあたしに対し、イリヤは何処までも冷静だった。言われたことは、間違ってない。間違ってないけど……!
なんか悲しくて、俯いてしまう。さきほどまでの勢いもどこにいったことか。
何もそういう言い方しなくてもいいのに、って思うけれどイリヤならこういう風にいうのは仕方ないのかな、とも思う。


