「はい、都に流通している状況からみても特に大きな問題はあるように思えませんから、滞在1週間ほどで調査ができると思います」
「え、それだけで?」

 確か、最初に書類を見ていた時は1か月近くかかるかな、なんて勝手に思い込んでいたけれど。
 やっぱり予め調べておくというのも大事なことなんだ。秘書、さまさま。


「移動を入れても、2週間と少しの期間かと。その分、他の公務に費やす時間が増えるので効率もいいでしょう」

 滞在中に調べておくべきことを分かりやすくまとめた書類を眺める。
 確かに、そんなに長くはかからなそうである。これは得した気分。

「それに、秘玉の主たるイリヤ様も連れていかれたら、そちらはそちらの試練でいいかと思います。まあ、旅行気分でも味わえるということで」
「……すごい、エッカルト公、すごい! そんなことの調整までしてくれるの!?」
「まあ、それが秘書というものですから」


 秘玉の試練。それはシロラーナの国を知ると言う事にも繋がり、また二人の仲を深める為にもよきこと、それと同時に公務も行えると語るエッカルト公にあたしは脱帽した。

 イリヤと旅行……ふと頭によぎったのは、例の事件の帰り路。ううん、あれは事件で、旅行じゃない!初めての旅行。あたしもやっぱり女なのね、そういうのが楽しくて仕方ないみたい。

 あくまで今回の事は仕事の上での、あまった時間の旅行にすぎないのに、あたしの頭の中ではすでに旅行の計画が立てられていた。


「じゃあ日程やそれまでの宿の手配などはあなたにまかしておいていい?」
「もちろんです。その代わり、視察で何を見るのか、どういうことが問題なのかというのは予めご勉強なさられてください」
「分かっているわ」


 嬉々として終わらせたその日の執務。まだ日も出ている明るいうちから、あたしのテンションはとても高かった。