中は、よく風が入るせいか少し肌寒く、それでいて薄暗い。こんな場所に居れば精神的にも追いやられることは目に見えていた。
 そんな中で、以前出会った時と変わらず、いや少し髪などが老いたようにも見えるリンド公に出会う。


「……セリナ様、あなたならこちらに来ると思っていました」

 取り乱すことはなく、囚人とは思えない穏やかな表情で檻の向こうにいる男をあたしはじっと見つめた。
 こんな時ですら、こうも落ちついている様子に、ますますリンド公の考えていることが分からないでいる。


「あたしが来るのが分かっていたというのなら、ここで真実を話すつもりもあると?」
「えぇ。今更足掻いても無駄なことは承知。それに……秘玉の主たる方も一緒に居るのならそれは丁度よいと考えます」

 ふと、イリヤの方を見つめ、目を閉じて語り始めるリンド公。
 イリヤはというと、なぜ自分がよばれたのか分からず顔を顰めるが、言葉には出さないでいた。

「年老いた私の我儘といいますか、欲に駆られた貴族のなれの果てでしょうか」

 自分のしたことに後悔はないように伺える姿。反省をしているというわけでもなく、無実を諦めているという感じもしない。
 不可解ともとれるリンド公の様子に、あたしは面には出さないけれど動揺している。


 一体、何をもってそんなふうに考えているのか。その口から語る真実とは。
 一言一句聞き洩らさないよう、神経を研ぎ澄まさせた。