フロウはいつもと変わらない表情で、淡々と答えた。

「相手が現れた以上、試練を乗り越えて正式に婿になってもらいます」

 呆れて笑えてくる。相手が男だろうが、秘玉の乙女と同じ試練を与えるとでも言うつもりなの。
 相手の男からは表情が読めない。

「彼はそれでもいいと言ってますので」
「はぁ!?」

 絶対にそう言うとは思えないのだが。ここにきて、初めて相手の男の方を向いて話をした。それは物凄い形相だと思う。

「ちょっとあなた、それでいいの? 自分の生活があったのでしょう! それを奪われてもいいの、それとも異例の厄介者のあたしとでも、皇族になれるのならそれでいいって魂胆なの!?」

 勢いで相手の胸倉を掴んでしまいそうになるが、さすがに抑える。
 しかし、かなりの接近した距離であたしは訴えた。

「別に、だって元に戻ったってやることなんて何もないんだ」
「彼は異界の住人です」

 諦めたような顔で話す男をよそに、フロウが話し始めた。
 異界って、つまりこの世界の者ではないってことよね。