【長】黎明に輝く女王

 2週間の旅。普段外を出た事がないあたしは、それを楽しむ余裕もなく疲労と……僅かながらの嬉しさを感じることができた。

 思っていた以上に、盛大に歓迎される。歓迎、はちょっとおかしいかもしれないが、気持ち的にはそんなところ。
 無事を喜ぶ近衛隊にメイドたち。中には、怪我もなく五体満足で帰還したあたしを好奇の目で見る貴族たちもいたが、今のあたしにはそんな奴らは目に入らなかった。

 不思議なくらいに、今まで居づらかった皇宮がどこか身近な場所に感じた。


 皇宮に戻り、休みを取りたいとは思うが、一応両親のところに顔見せに行こうとは思った。
 ただ、疲れているので無事を伝える為だけにしようと思っていたのに、これが思いのほか、“喜び疲れる”ものだった。


 ただ家族として無事を喜びたい、そう聞いて向かったのは両親の部屋だった。普段は執務室などで話す事が多いので、プライベートの部屋に向かうのは実に約十年ぶりになる。
 小さい頃はそれこそその部屋でよく過ごしていた。けれど、その頃から親に対して壁を感じていた事実がある。

 扉の前で開けないといけないという喜びに似た気持ちと、もし開けて拒絶されたらどうしようという不安が入り混じり、緊張した手つきでドアノブを握ったまま、動けなくなってしまった。
 そんなあたしを見かねたイリヤは言う。

「開けないんなら、僕が開けるけど」
「え、ちょ、待って! まだ心の準備が……」

 なんて言っている時にはすでに扉は開いていて。あたしの焦る姿はその中に居た人たちにはもちろん、丸見えで。
 家族相手にものすごく恥ずかしい気持ちをもったのは、この時が初めてかもしれない。