【長】黎明に輝く女王

 途方もなく、長く永遠に続くのではないかと思ったが、意外にもあっさりと離れる唇。淫らに、唾液が繋がり滴り落ちる様を見て、一瞬でももう終わるのと思った自分が、恥ずかしい。

「なに、その物足りなさそうな顔」

 そしてそれはイリヤにも伝わっていたようだ。

「そんな飢えた女の顔をして……他の奴らにみせたらすぐ食べられるよ」

 じゃあ、イリヤは食べないんだ。素直にそう感じた自分が嫌になる。あたしは、そうなることを望んでいるの?
 ううん、そんな破廉恥な。このあたしが誰か、人に対してそんな感情をもつなんて。

 あたし自身が一番、信じられないでいる。


 結局、なんていっていいか分からず、口を開けたままのあたしを見て、イリヤは言った。

「伯爵のことは今はいいから。“お詫び”についても皇宮に戻ったら嫌ってほど話してあげる。だけどね、今は二人きりでいるんだから伯爵のことなんて話したらダメ」

 意地悪くそういう彼は指をあたしの唇に沿えて、喋るなと伝えてくる。

 ここで逆らったらどうなることやら。彼のいう事に逆らわない方がいいのは、今まで身をもって経験してきた。
 今は、大人しくしておこうと思った。


 しかしながら、馬車の中で二人っきり。途中宿や休憩のため、外に出る事はあるが、それ以外の時、二人でいるときはなぜかあたしの体を異様なまでに触ってくるイリヤがいた。
 そしてそれを嫌とも感じないあたし。やっぱり、惚れた弱みってヤツなのかしら。