【長】黎明に輝く女王

 こうしてあたしたちは伯爵邸を後にした。
 馬車に乗り、皇宮に向かう。その中にはあたしとイリヤの二人。……とても気まずかった。

 誰かと接しているとき、イリヤは今までと変わらなかった。当たり障りもなく相手と接し、あたしに対してはどこかしら冷ややか。
 そんなイリヤに対してあたしは頭が上がらない。一枚も二枚も上手。


 だけど、二人きりの馬車の中。

 異様に密着する体と体。相手の体温を感じる事ができるほどの距離。どうしてそんなにもくっついてくるの、と聞きたくても聞けないでいる。

 それでもこの空気を打破しようと、話しかけた。

「ね、ねえ。あの時、リンド伯が言っていた“お詫び”って、どういう」


 しかしすべてを言うことはできなかった。
 だって、言っている途中に、顔に手が添えられ、思考が停止してしまったから。

 今、あたしは、何をされているの?
 お互い顔を向きあっている、というよりは向けさせられているといったところか。少し強い力で顔を手で挟まれる。
 そして、とても接近しているイリヤの顔。なに、この距離感。近い、近すぎる。

 じっと見つめられ、恥ずかしく居た堪れない気持ちなる。どうしていいか分からずかたまっていると、次の瞬間、止まっていた思考が真っ暗になった。

「ん! んっ、ぁ」

 き、キスしてる!? しかも、舌が入っている。え、なに、これ。あたし、何しているの!?
 リップ音をたてながら、舐められるように、吸いつくように唇同士をくっつけている。

 あたしの顔をはさんでいた手は、気がついた時には、腰まで下がっており、背中にまわされぎゅっと動けないほどに抱きしめられている。