「彼は貴女の秘玉をもっています」

 まさに、鈍器で殴られたような感覚。貧血なんて今まで無縁の存在だと思っていたのに、ふらふらする。
 改めて相手を見る。まるで、闇の中を生きてきたような男だ。冷たい視線が突き刺さる。
 もし自分にも秘玉の相手が出来るのなら、こんな自分を理解してくれる優しい男がよかったのに、まるっきり正反対のようだ。

「だったら何? 異例のあたしにも、結婚相手がいるっていうの!?」
「それは分からない。ただ、彼が貴女の秘玉をもって現れたという事実だけがここにあります」

 本来、秘玉というのは皇太子が生まれた時に持っている玉で、時が来るまでは管理者が保管し、その時が来れば彼女の手から、秘玉の主にへと手渡されるものだ。
 しかし、その男は持って現れたという。不自然ではないか。

「本当にあたしのなの、確認はしたのでしょうね」
「もちろん。在るべき場所には在りませんでした。これ、としか言いようがないですね」

 それでも、と何かに理由をかこつけようとしたが相手が彼女なら意味がない。
 口に出す前に、言わずに終わる。

「それでどうしたいの?」

 回りくどいことは嫌いだ。結論を先に述べてくれ。