【長】黎明に輝く女王

「イリヤ……」

 先に言葉を発したのはあたしの方。それも消えてしまいそうな小さな声で、呟く程度。
 そんなあたしに向こうはどんな反応を示しているのか、見る事ができなかった。
 拒絶されるんじゃないのかと怖くて、下を向き、意識を別の方向にもっていこうとした。

 不自然なあたしの動きになんて感じているのだろう。
 彼に嫌われるのを怖がっているあたし、それだけ思いが強いのだと思う。離れていて再会した分、会えてうれしい気持ちはち切れんばかりに大きくなっているのに、それを凌駕するほどの恐怖。

 そのままイリヤとは目を合わせず、案内された席に座った。


 ちょうどその時、騎士団の一人が声をかけてきた。

「姫様、お怪我とかはありませんか」
「大丈夫よ、すこし身体が疲れてはいるけれど、至って健康」
「そうですか、詳しい事情の方はまた後日お伺いしますので、それまではゆっくり休んでいてください」

 騎士団、今は捜索隊の彼らは今後、皇宮に戻るまでの手順などを話してくれたが、疲れているだろうと用件は短くすませ、すぐに部屋に戻ってもよくなった。
 皇宮への連絡や帰りの仕度などはすべてしてくれるという。

 普段ならあたしも一緒にすると言いたかったが、その場に居たくないと思ってしまったため、素直にひくことにした。
 先ほど座ったばかりの席から立ち、イリヤと視線が合わないように意識してその場を離れた。