【長】黎明に輝く女王

「そりゃ、そうでもしないとこっちも被害がでそうだったからに決まっているだろ。乱暴な姫様だし」
「んなぁ!!」

 顔に熱が集中したようだった。いくらあたしでも、我慢できることと、できないことがある。
 そんな風に言われて、大人しくしているほどできた“姫様”じゃない。

「おおっと、乱暴はやめてくれ。それにまだ疲れているはずだ。ゆっくりと休んでくれ、姫様」

 掴みかかろうとしたあたしを優雅に交わし、右頬に軽く口付けると、リクハルドは部屋から出て行った。
 いつかのように、どうしていいか分からず重い心だけが、取り残されたようだった。


 あたしが想像していた以上に、ここの人達は親切だった。食事は食べきれないほど豪華なものではなく、彩鮮やかで、栄養のバランスの取れたものを用意してくれたし、風呂に入りたいといえば、大浴場に案内してくれた。

 生きることに必死だったため、風呂なんか当然何日も入ってなく汚い。
 お手伝いのメイドたちには当たり障りなく断りを入れ、一人でゆっくり湯に浸かる事も出来た。


 そんな風に過ごしていたためか、重要な事を聞くのを忘れていた。
 結局、あたしを連れ去り、あそこに閉じ込めたのは誰なのか――という事実を。