【長】黎明に輝く女王

 この寝室には扉の他、小さな出窓が一つついていた。窓から人が出入りするのは不可能。
 しかし、窓はそれ以外の情報も与えてくれる。

 まずこの屋敷がどんな場所にあるのか。見える景色から察するに、まずこの部屋は一階ではなく、二階以上であること。
 そして手入れされた庭も、外観も立派な屋敷であること。

 緑の芝生は左右対称に整備されており、中央であろう場所には噴水がある。芝生の両側には色とりどりの花が植えられており、奥にはレストハウスのような建物も見受けられた。
 多分、この部屋は門とは反対側の奥に位置している。窓からは門らしきものは見えなかった。

 それにこれほどまでに美しく整えられた屋敷。絶対に人が住んでいる事は間違いない。

 今までいた屋敷の方はすでに使われてない廃屋であったがために、人に見つかる心配は限りなく少なかった。
 しかしここから出ようとすると、何の事情も知らない者たちにまで目撃される恐れがあった。
 それがいい方向に進むのか、悪い方向に進むのか、何とも言えない。

「敵に見つかる、よりもある意味厄介かもしれない」

 一人そうつぶやく。
 この状況を考えるとますますややこしくなることは、間違いなかった。

 せっかく逃げ出す事が出来たと思ったのに、心の中は深く落胆し、それ以上考えることをやめた。