「フロウどうして、」
こんなところーーあたしの部屋なんかにいるの、と聞こうとして言葉が詰まった。
彼女の奥に人が居る。気配なんて感じなかったのに。
それだけじゃない、見慣れない格好の男。
黒い。服もだが、その髪に瞳が闇のように計り知れない黒だ。
予想外の事態に言葉が出てこなかった。
「あら、セリナ。帰らないと思ってましたが珍しい、ナーディアが寄越したのですか」
「……フロウ、そいつはだれ。そしてなんでここに居るの、部屋の主の許可なく」
「許可なんていりますか」
余裕こいたその薄ら笑いが気に入らない。
彼女の奥にいる男がじっと見つめているのが変な気分。
相手を見定めるようなその見方、気に入らない。
「まあ、あなたを挑発したところで意味はありませんね。それよりもセリナ、大事な話です」
いつもの笑みが消え、普段見ない真面目な顔付きに、息を呑む。
体が動かず固まってしまったようだ。
そんなあたしに一歩近づいて、言った。


