【長】黎明に輝く女王

 それから一週間ほどが過ぎ、ようやく事件解決に直接繋がるであろう情報を手に入れた。

『とある人物の様子が最近おかしい』

 外での情報では有力のが得られない中もたらされたのは、内側の貴族官僚の身辺調査だった。
 捜査は大きく分けて、イリヤがしていた科学捜査の他に、実際に怪しい場所などがないか調べる現場捜査、そして内部犯の可能性もあるとして身辺調査の三つある。

 最初にいわれていた疑問。皇宮の、しかも皇女の執務室から攫ったということは、そこに侵入できる人物、もしくはその場に皇女がいるということを知っている人物に絞られる。

 外部から盗賊などが来て攫われるより、理由も考えられる。皇位継承権をもつ皇女が邪魔だという理由が。


 そのような理由から周囲には隠密に、極少数の皇王直属の配下、信頼できる者のみが身辺調査を行っていた。

 爵位のある貴族、中央で働く官僚の数は100近く。一人ひとり調べるのには時間がかかった。
 その中で、事件中だからこそ怪しいと思われる人物が浮上したのである。


 リンド公。公爵として50年近く生きてきた彼は、もともとその半分近くを領地であるミゼット州で過ごし、長男が成人してから領地の事は彼に任せ、都の方に住居を構え、中央の政治に介入してくるようになった。
 もともと先祖代々由緒正しい家柄なので、そのことに対して非を唱える者などいなかったし、古参貴族の間ではそれが“常例”と化していた。

 比較的温厚で、人当たりもよい彼は皇女賛成派の一人としても有名だった。