【長】黎明に輝く女王

 今まで挫折したことなんてなかった。嫌になってやめたくなる気持ちには何度かなったことがある。
 それでも、こんなに気持ちと自分の能力が伴わないはなかったのだ。
 どうにかしたいのに、できない。どうすることもできない。深い絶望というのをイリヤは初めて実感した。


 そして思いだすのはセリナの言葉。困ったことがあると彼女はいつもどうしてと自分を嘆いていた。
 その後には必ず続く言葉があった。“助けて、女神さま”というもの。

「その時僕はなんて言った……? 追い詰められたら、神頼み。非現実的な幻想は信じる事が出来ないって」


 確かに信じることなんてできない。決定的な事実が突き付けられたわけでもない。
 けれど、彼女が求めていたものとはそんな言葉じゃなかったんだ。


 純粋に助けを求めていた。
 どうにかしたいのに、できない、深い絶望。助けを求めたくても、家族にすら求める事ができなかった彼女。

 絶望した心はやがて大いなるモノに救いを求める。神頼みとはまさにそんなものだろう。
 セリナ自身のあの言葉に隠された思い。

 たとえそれが科学的にありえなくても、現実的に起こりうることじゃなくても、誰かに助けを求めたかった。
 そうすることで心の安定を図っていたのかもしれない。


 それなのに。

「僕はなんて馬鹿なんだ。そんなんじゃ、あの子に嫌われても当たり前じゃないか」

 心の救いすらも否定したのだから。
 でも、イリヤはこんなところで絶望なんてしていられない。

「なら。これからは僕が代わりになればいい。唯一の救いになってみせる」

 それは純粋なセリナへの思いか。それとも女神への嫉妬か。はたまたそのどちらもなのか。
 分からないが、それはこの場では問題ではない。

 元気を取り戻した。

 それでいいのではないか。