「まあそれは最終手段として。おそらく色は無色透明、匂いもない。もしかしたらお茶の中の何かの成分と化学反応をしてそうなる可能性だってある、ゼロに近いけど……あぁもう、この世界の常識って一体なんなの」
あとは効能。死に至らしめるもの、ではないはずだ。いやそう信じたい。仮にも皇女であり、皇位継承権もある。
もし殺してしまえば、犯人も死刑は免れない。そんなバカな奴じゃないはずだ。
犯人に対して変な希望を抱いてしまう。
そもそもお茶自体はとても健康によく、かつては薬の代わりに使われていたもの。それをこんな形に使うなんて。
この国の人はよくお茶を飲む。それを逆手にとって悪用する。卑怯なことだ。
物音もしない静かな空間。
ひとりになってようやく気付いてしまう。
結局のところ、自分は何の力ももたない人間なんだと言う事を。
いくら元いた世界で科学者としても働いたとはいえ、それが成立するための環境が整っていた。
あの頃は、それが当たり前だと思っていたし、その考えが揺らぐことすら知らないでいた。
道具もない、設備も整っていない、しかもこの世界の常識すらない。
どうすることもできないもどかしさ。こんなことなら、お茶に集中することなく、地道に捜索活動に参加している方がよかったのか。
「あぁ、なるほどこれが絶望という気持ちなのか」


