正直な子は嫌いじゃないわ。
 怯える兵士の耳に小声で呟く。背筋がぴんと伸びていて、見ていて少し面白い。

 さておき、情報は手に入れたので門番の中庭まで歩く。
 焦って走ってはだめ、真実は逃げちゃうわ。


 母の趣味で様々な花々が咲き乱れる中庭は特に大きく目立った変化はなかった。
 少し花びらや草の切れ端が飛び散っている程度。

(これは……事件はもう去った後ということか)

 おそらく王宮の誰かに聞いても答えてはくれないだろう。
 あの兵士の様子からも隠し通している。
 なら、直接会って聞くしかない。こういう事情に詳しいフロウに。


 ってあの人を捜すのも大変なことだ。
 神出鬼没で特定の部屋に居座らない彼女のことだから、見つけにくい場所、そして意外性のある場所にいるとは思うけど、どうしよう。

 フロウは、人が絶対来ないと思える所にいる。
 目を閉じて、集中すると感じる、彼女の気配を。


「って、まさかあそこにいるなんて」