【長】黎明に輝く女王

「キミは、なぜこうも落ちついていられるんだ」
「へ?」
「分からないのなら、調べたらいいだろう! それを知りませんで済むと思うの? そんなんだから、いつまでたっても、ここの科学は進歩しないんだよ。分かったのなら、一緒に調べたら?」

 研究員の男はかたまった。かけていた眼鏡が少しずれ、鼻の上に落ちている。視界にはぼんやりとしか映らないが、イリヤが醸し出す雰囲気に息ができないでいた。


「それが嫌なら、そんな中途半端な気持ちなら、こんな仕事なんてやめてしまえ」

 はっきりとは見えないのに、見えてしまった。そういう彼の表情が普段の笑顔からは想像もできないほど、冷めていて嘲笑ったかのような笑みを。
 しかも、それは自分に向けられているときた。


 蛇に睨まれた蛙のように、研究員は動けなかった。金縛りにあったかのように硬くなったからだは僅かながら動いていた、恐怖の悪寒として。
 ずれた眼鏡すら戻すことのできない、緊迫した雰囲気。


 研究員は、自分より年下の少年ともいえる青年に恐れおののいた。