【長】黎明に輝く女王

 やはり自分の常識なんて当てになりやしない。強くそう実感した。
 イリヤの中での科学分野というものは草木や鉱物はもちろん、原子分子レベルで全てのものが解明されており、それらを使って新たな物質を作ったり、医療に応用したりと、あるモノから別のモノを見つけていくというものだ。

 だがシロラーナでは、その前段階である物質の解明がまだ不十分だという。
 それならば、検出されない可能性だって十分に考えられる。おそらく、今の技術では化学反応を示さないので、何もないと判断されたのだろう。

 しかし、それが検出されるための技術を編み出すことなんて今は無理だ。
 それなら……。


「そのまだ名もつけられていない薬草などの一覧、性能や効果を書いた図鑑なんてものはないの?」
「えぇーそんな無茶言われましても、まだ名もないのですから図鑑なんて。まあ誰かが特徴を記した書類程度なら探せばあるかもしれませんが」
「どこに」
「えーあ、あの保管棚の中だったと思います」

 それを聞くやいなや、研究員が指差した保管棚の方へ跳んでいった。
 本棚の隣に備え付けられているそれは、ファイリングされた文書で溢れかえっていた。

「この中探すの!? 手がかりとかないの」
「んーさぁ知らないですねー」

 あっけらかんと答える研究員の態度にいよいよ腹立たしくなっていた。
 自分はこんなにも一生懸命に調べているのに、なぜこうもあっさりしているのだろうか。
 分からない事を分からないでほっておけれるか? いや、真の科学者ならば、知りたいという好奇心が疼くはずだ。
 それに、これから注目されるであろう薬草を記した文書をこんなにも適当に保管しておけるのか。