各方面で皇女の捜索が行われたが、一日一日が無駄に過ぎてしまい、確固たる有力情報が得られない。

 だが、反対派がそのことについて邪魔をしているというわけではない。
 確かに皇女の反対派の権力は強い。しかしながら、それは古参の貴族という権力だけである。
 皇王の忠実な配下や若手官僚たちは基本的に賛成派。貴族の中にだって賛成派がいない、ということはない。
 彼らは皇女に友好的だ。

 でもそれだけでは、何の解決にもならないのだ。

 皇女が消えた執務室。あまりに自然過ぎて、ほとんど証拠がないかのように思われた。
 調べようにも、調べるものが少ない。それでも必死になって調べ続ける者がいた――イリヤである。


「なぜ、あのお茶から何も検出されないんだ!!」
「そのように言われましても、怪しいモノは出てこなかったのですから」

 イリヤ曰く、科学捜査室に当てになるものなんていない。今までイリヤが体験してきた施設設備と比べるとそれらはおもちゃである。
 高度な設備、機器、最高水準を誇っていた施設にいたイリヤからすれば、子どものおもちゃ、よくて学習のための実験道具に見える。
 だけど、このシロラーナ、ひいてはこの世界においてはこれらの設備は最高峰のものなのだ。それ以上のものなんて存在しなし、これらだって十分に実験、研究はできる代物だ。