【長】黎明に輝く女王

 セリナという少女は皇王夫婦の皇女として誕生した。

 周囲は待望の第一子に誕生前から期待を寄せられていたという。
 皇子の誕生を。次の後嗣を。しかし生まれたのは女であった。しかも、その子は秘玉を持って生まれてきた。

 別に女が第一子でも問題はなかった。問題なのは、女が秘玉を持って生まれてきたという事である。
 皇女は後嗣となるのか、否か。誕生とともにその論争は繰り広げられ、彼女が物心付くころには日常茶飯事の出来事となっていた。


「周囲がどんなに言っても、わたしたちは愛情をもってあの子を育てたわ。だからまだわたしたちの前では自然な姿でいられたの」

 周りの大人たちが自分をよく思っていない事、感受性の豊かな子ども時代からそれを感じ取っていたという。
 そんな皇女の心の拠り所が家族と女神だった。

 皇女は母に連れられて、よく神殿にも遊びに行っていた。神殿の巫女たちは皇女を“女神の恩恵”とよき遊び相手になっていた。
 とりわけ、神寵姫には、母のように姉のように慕っていた。というのも、彼女は神の言葉を預かる者。
 神寵姫は皇女に伝えた、今のあなたの様子に女神が嘆いていると。辛い時には、心の中で女神に語りかけると、必ず答えてくれる。

 それを聞いた皇女は女神にお願いをするようになった。
 実際、お願いをしても現状はよくならない。それでも、心で願い、言葉を返してくれるだけで皇女は幸せだった。
 数少ない、自分と話してくれる方、そんな風にとらえていた。