【長】黎明に輝く女王

「本来後嗣は男で、秘玉の主は女。セリナが秘玉を持って生まれた時点でこの法則は崩れた。そして現れた貴方は男。

つまり、これまでの前例がすべて貴方達にも通じるかどうか、それは分からない」

 その話は、セリナから聞かされたことがある。そのことが、彼女を追い詰める事実であることも。

「僕は、セリナが好きかどうかと言われても上手く答えられません。ただ、彼女を助けたい、救ってあげたいという気持ちはあります」
「それは同情? それならセリナの傷は余計に深くなるわよ」
「でも! それ以上に、傍から離れたくない、一緒に居たいという気持ちが強いんです。それは、彼女を縛りつけるとても醜い感情だと思います。それでも僕以外の男が傍にいるのも許せない、その目に映るのは僕だけでいいって思う、ひどい男なんです」

 ここまで自分の感情を吐き出すのは初めてのことだった。それに後悔なんてなかった。
 だけど、こんなことを彼女の母親の前で言ってしまい、顔を、目を見て話すことができなくなり、俯いた。

 すると、ゆっくりと皇妃が近づいてくるのが分かった。そして次の瞬間、乾いた大きな音が響く。


「そうやって逃げても意味ないわよ。ちゃんと相手の眼を見て話しなさい」
「え……?」