【長】黎明に輝く女王

「もしかして、それが?」
「ええ、これがわたしの秘玉飾り。貴方にもあるでしょ?」

 そう言われて取り出したのは、紐に繋がれた一つの小さな玉。皇妃のそれと比べるとあまりにも違いすぎる。
 大きさや量という目に見えるもの以外にも。上手くは言えないが、決定的な違いがある。

「へえ、貴方のはまた変わった色ね」
「色? 何もないかのように見えるんですが」
「ふふふ、それじゃあまだ見えていないのね。秘玉は主に手渡されると色付くの。貴方はそれをどう見るかしら。透明? それなら、貴方は完全には“秘玉の主ではない”。やめることもできるわよ? それなら、セリナはまた別の主を探すけれど」


 彼女には敵わない、今更ながらそう感じ取った。

 セリナとイリヤの関係は国の後嗣と秘玉の主、つまり伴侶である。その関係があるからこそ、余裕もあった。
 今までの分を取り戻そうと、セリナとの距離を戻す決心もした。

 しかし、秘玉の主でなくなるということは、伴侶でなくなるということになる。それどころか、別の男が新たにその地位に着く事にもなる。

 そんなこと耐えられることができようか。時間がない。セリナを地位で縛ることができなくなると、きっと彼女はあっさりと消えてしまうだろう。嫌だ!

「その、秘玉の主でいることはできますか?」
「できるもなにも、それは貴方の意志次第。その意志が固まれば、自ずとその秘玉が何色なのかも分かる。そして、わたしのように秘玉飾りになる……だけど、分からない事もあるわ」
「分からない事というのは」

 慈愛に満ちた笑顔を浮かべ、皇妃は説いた。