【長】黎明に輝く女王

 一方、イリヤは皇妃に対して逆らえない雰囲気を何となく感じていた。
 有無を言わさず、皇王に提案し、ここに連れてくる。一体、何を言われるのかと内心、ひやひやしていた。

「さて、どうぞ座って」

 見た感じはとても穏やかな女性。セリナとはまた違った髪質、金髪をした女性は、とても堂々としていてさすがは皇妃といったように思えた。
 神秘的な紅い瞳は何もかも見透かすようであり、怖くも感じた。
 だからイリヤは先手を打った。

「あの、何か、いけないことでも言ったのでしょうか」

 真剣な彼の面影に皇妃は、面白かったのか笑い始めた。


「あはは、別にそんなんじゃないから、硬くならなくてもいいよ。リラックスして……っていうのは多分無理かもしれないけれど、怖い話なんてしないから」

 皇妃とはセリナと共に大勢の人のいる場で会ったのみ。こんな個人的な場で、しかも二人っきりでいることにイリヤは慣れないでいた。


「先ほどの話と被るところもあれば、そうでないことがほとんどだから。ただね、一度貴方とは話してみたかったのよ」

 妙に慣れ親しく話しかける皇妃にイリヤはどうしていいか分からないでいた。浮気? いや、違う。こんな緊迫した状況をそんな甘い言葉で言えるか。
 説教、というわけでもなさそう。ただ大丈夫と言われても、怖いものは、怖いのだ。