【長】黎明に輝く女王

 その言葉に、皇王は別にかまわないが、と返事をした。ただ皇妃の方は、その言葉に何か感じとり、イリヤに尋ねた。

「お茶の方? それよりもセリナの捜索に精を出さないの?」

 それは娘を心配する母としての言葉だ。イリヤの立場は秘玉の主、つまりセリナの伴侶として一応は成り立っている。
 ならば、すぐさま探しに行くというのが伴侶というものではないのか?

 あなたにとって、娘は大事な存在ではないのか、そう問いただしているようなものだった。
 しかし、イリヤはその問いに焦ることもなく、むしろ聞かれるのは想定内だったかのように、笑みを浮かべて答えた。

「今の状況からただ闇雲に探したところで、見つからないと思います。ならば、的確な情報をいち早く集めて、助けたい。そちらの方が効率的だと思うからです。それに僕は元々科学者として働いていました、お茶の事でも何か調べることはできるでしょう」

 その答えに、皇妃は軽く相槌を打った。そして苦笑いをした。

「なんというか、男の子らしい答えね。現実的というか。でも覚えておいて。女はね、理よりも情で動くから」
「は? はぁ……」

 イリヤには皇妃の言っている意味が分からない。だから当たり障りのない返事をしたのだが、それが彼女の望む答えじゃなかったのか、皇妃はイリヤをじっと見た後、隣に居る皇王に喋った。

「ちょっと、休憩室でその子と話してきていい?」
「……はぁ、分かった。話しておいで」

 皇王は妻を見て、素直にその要求に応じた。別に仮眠室じゃないからいいでしょ、なんて声も彼には聞こえた。
 国の長としては、優秀な王でも、家庭では妻に頭が上がらない、そんな夫である。

「じゃあリュカ、あなたはお父さんと晩御飯でも食べてなさい」
「うん、分かった」

 皇妃はそう言って、隣の休憩室でイリヤを連れて行った。