【長】黎明に輝く女王

「しかし本宮の執務室から連れ去るとなると、違和感なく出入りできる人物だな。そしてセリナを何かに隠して運び出したか」

 いろいろ考えが浮かんでくるが、ここでイリヤが再び話しだす。

「どちらにしろ、決定的な証拠ではありません。お茶の方も調べてみなければ分からないですし。ただ、執務室に入ってから出た姿を誰も見ていないということは、一人で出たことは考えにくいです。何者かが侵入した可能性が高いはず」

 そう。結局どんなに考え込んでも、それは憶測でしかなく、真実とはまだ言えない。
 ただ残された状況から様々な可能性を推論し、しぼっていくしかできない。

「そうだな、とりあえずお茶は調べさせよう。そのしみの状態も」

 話はそれから、そして同時進行でセリナの捜索も行うこととなった。
 やはりどんなことがあれ、一番は身の安全の確保だ。

 それが約束されるのなら、どんなことだってしよう。一刻も早く見つけ出すためならば。
 イリヤの決意はかたかった。

「それで……お願いがあるのですが」
「何だ?」
「そのお茶の方、僕も一緒に調べてもいいでしょうか?」