【長】黎明に輝く女王

「おねえちゃんのこと! たぶん、おねえちゃんに最後に会ったのはぼくなんだ。でもそれだけしか分からない……それに最近、本宮があやしい感じってきいたけど、ホントなの?」

 息子の言い分をすべて聞いたあと、皇王は何か考えているようだった。

「本宮でいま起きていることだが、こちらも気になることがあるから調べているところだ。ただ、今の状況では何があるのか分からない。だがセリナが消えたことで、何かしらの関係性があるのではないかと今調査中だ」
「リュカ、あなたが最後にセリナに会ったっていうのは本当なの?」


 リュカに聞いたのは皇妃だ。やはり、自分の娘、消えてしまって心配なのだろう。でも、そんなに慌てていない様子を見ると、ただ精神が強いのか、鈍いだけなのか分からない。

「うん、ヴェイニと一緒に。えっと、10時過ぎだったと思うよ」
「そう……。あの子のことだからお昼は一人で部屋で食べてそうだし、執務室に籠ってからの情報はほとんど分からないわね」
「そのことについてですが」

 その時、イリヤが話の中に入って行った。今まで黙っていたイリヤの方に自然と目が向く。

「先ほど彼女の執務室の様子を見に行きました。特に争った様子などなく、普段と変わらない状態でした。唯一つ、気になるところがあるとすれば」
「それは?」

「お茶のしみです。執務室で休憩をとっていたのか、休憩用のテーブルの上にはティーセットが置かれてました。ポットやカップにはお茶が入ったままです。特にカップはテーブルの端におかれ、少しの間そこに置いているだけかのようにも見えました」
「それと、お茶のしみがどうかんけいするの?」

 リュカが気になったのか、イリヤに聞いてくる。彼はいつになく真剣な顔で答えを述べた。