この世界はどこよりも美しく、そして醜い。目に見えるものが、すべてではない。
 目を閉じれば、自然の息吹き、温かさを感じることができる。


 なのに、少女を取り巻く環境だけは違っていた。
 僻み、妬み、羨み、目に見えない何かが押し寄せている。

「どうして、あたしだけ」

 そうやって、自分は不幸なんだ、悲劇の象徴なんだと思うことで、何とか自己を保っていた。
 そしていつしか、その心を殺し、偽りの姿で生きていくのが当り前となってきていた。


 抜け出せない迷路。それが彼女を苦しめている。
 そこに一筋の光が入り込む。やがて世界も動き出すことになった【黎明の女王】のお話をしよう。