私だって、本当は分かっていた

だけど、どうしても貴方の傍に
居たくて、私は我侭を言う。

今、庵が何を想い

何を感じているのか・・・
 
私は、何も知らずに、久しぶり
に訪れた居酒屋の穏やかな空気
に和みながら、更紗と雪乃と
お酒を飲んでいた。

でも、そんな中でも、私の心を
捉えて放さないのは、新さんの
あの瞳、あの言葉。

「聞いてる、スミレ?」

急の報告に、驚かされたと話す
二人をよそにぼーっとしている
菫、そんな彼女に、更紗が先に
声をかけた後、雪乃が続く。

「どうかしたの?
 仕事・・・それとも
 イオリさんの事?」

「ううん・・・何でもないよ」

更紗は、グラスを菫に渡した。 

「結婚の前祝、乾杯しよう
 おめでとう、スミレ」

「スミレ、おめでとう」

「サラ、ユキ、ありがとう」

菫は、二人の
祝福の言葉を受けて
 
幸せな気持ちで
胸がいっぱいになる。