『私を貴方の
 家族にしてください』

この生きる世界で、家族と
呼べる者達を亡くしてしまった
庵にとって、菫の言葉は、心が
震える程に嬉しいものとなる。

でも・・・本当に、このまま

突き進んでいいものか?

彼女が笑顔を無くし、澄んだ瞳
が悲しみ色に染まってしまう日
が、今後、訪れるかもしれない
・・・

庵の心の中で、不安な想いは
どんどん大きくなっていく。

加速する車の後部座席に座る
庵は、照れながら要に話した。

「近々、すみれと所帯を持つ事
 になりそうだ」

「親父、本当ですか?
 それは
 スミレさんも喜ばれたはず
 私も、とても嬉しいです
 おめでとうございます
 お二人には
 幸せになって頂きたい」

幸せ・・・

要の言葉が庵の胸に引っかかる。

「こんな俺が、すみれを
 幸せにして
 やられるだろうか?」