飴色蝶 *Ⅱ*

あの日、夕暮れ時

泣きながら帰った道。

「親父、着きました」

「ああ、すみれ、降りよう」

車から降りた私は、驚くのと
同時に、嬉し過ぎて涙が溢れた

そう、この場所は、過去に
一度だけ訪れた事がある

庵の住むマンションの前だった

あの日以来、どんなに願っても
連れて来てもらえなかった場所

貴方と初めて、結ばれた場所。

庵は、右腕で菫の肩を抱いた。

「カナメ、明日、電話する」
 
「はい、分かりました」

菫の肩を抱き、歩きながら
庵は、いつものように背中越し
に二度手を振り、建物内へと
入って行った。

その姿を確認した要は
その場を離れる。

エレベーターを待つ二人。