飴色蝶 *Ⅱ*

何も知らない、菫を乗せた車は
走り出す。

「ねえ、イオリ
 どこへ連れて行って
 くれるの?」

そう問いかける菫に、庵は
何も話さずに、いつものように
窓の外を流れる景色を
見つめていた。

静けさが漂う車内には、菫の手
を握り締める庵の冷たい手の
感触だけがあった。
 
その手に

ずっと、触れていたい。

この手に

ずっと、触れられていたい。

菫は、頭を左右に振る。

今は、庵の手の、心地よさに
酔っている時では無かった。

菫も、窓の外を眺めながら
いったい何処に向っているのか
とヒントを探す事にした。

ここは、以前、訪れた事が
あるような気がする。

知っているような気がする。

確か、この道は・・・