飴色蝶 *Ⅱ*

携帯電話を、上着のポケットに
しまった庵は、自分のアイスを
菫に渡した。

「いいの?」

庵が口元を緩めた後に、一度
だけ頷くと、菫は、満面の笑み
を浮かべて喜んでみせた。

もっと、その笑顔を見たい。

もっと、彼女を喜ばせて
あげたい。

庵は、そう思うのだった。

にこにこと微笑みながら
アイスを食べる菫を
見つめながら、庵は言う。

「食べ終わったら
 
 連れてってやるよ」

「どこに?」

庵は首を傾げた後、一切
何も話さなくなる。

支払いを済ませた二人が
店の外へ出ると停めてある
車の傍に、要が立っていた。
 
庵は、要の元へ近寄り
彼の耳元に、菫には聞こえない
程の小声で、話して聞かせた。

行き先を知った要からは
優しい笑みが零れた。