飴色蝶 *Ⅱ*

何も話さずに、新の元を去ろう
とした庵に新は、言う。

「俺なんかに見向きもしない程
 彼女は、貴方を愛している
 彼女は、俺に言った
 あなたを忘れられないと」

『彼を・・・
 イオリを忘れられない』

新から聞いた事実が

庵を苦しめる。

バックミラーに映る庵は、
両手で頭を抱え込む。
 
要は、そんな庵を見ては
いられない。

「スミレさんに、今度こそ
 逢いに行かれては
 いかがですか?」

庵は、首を左右に振る。

「俺は、もう
 すみれには逢えない」

愛する人を、これ以上

悲しませたくない。