飴色蝶 *Ⅱ*

菫に、余計な事を言った新への
苛立ちが、だんだん、自分への
苛立ちに変わって行く中で
庵は、ただ、あの日の菫を
思い返していた。

涙を流し、庵に逢えてうれしい
と話す菫。

庵の愛を受け入れた菫は
とても幸せそうだった。

そんな彼女が、急に別れを
口にした。

それは全て、俺の為にしたこと
なのか?

『私の事、愛してくれて
 ありがとう
 逢えなくても、私は貴方を
 ずっと愛してる』

『好きよ、イオリ・・・』

「俺が、すみれに別れを
 言わせてしまった」

「彼女の願いは、ただ、ひとつ
 貴方が、対立抗争に
 巻き込まれること無く
 ずっと、生きていてくれる事
 それだけを願い
 貴方に、別れを告げたのに
 当の貴方は、また、荒波の
 渦の中へ突き進んで行くの
 ですか?
   
 会澤組に逆らっては生きて
 いけない
 彼女の願いは、叶わない」