刑期を終えて釈放された庵は
兼ねてからの望みどおり

立派な一軒家の前に立つ。

表札は、橘川。

そう、ここは、菫の実家
である。

「イオリ、緊張してる?」

「ああ」

「やっぱり、帰ろう
 
 無理しなくていいよ」

「殴られる覚悟はできてる」

深く息をついた後

庵は、菫の手を握り締めて

ドアホーンを押す。