要に背を向けて、庵は歩き出す

そして庵が、右手を上げて
二度振るとエンジンの音が
聞こえた。

二人は、別れた。

ドアの前、菫は困った表情を
浮かべて誰かと話をしている。

その相手は、仮釈放の身である
庵を指導する保護司である。

そう、今日は面接日。

庵に連絡を取る事ができず
会えない事に疑問を抱いた
保護司に、菫が一生懸命に
事情を説明しているようだった

瞳を潤ませて

今にも泣き出しそうな表情で

困っている、菫

・・・愛しい、あなた。

「すみれ、ただいま」

「イオリ?
 ・・・おかえりなさい」

彼女の瞳に、涙は溢れ
頬を伝う。

彼女を泣かせたのは、この俺。