「ああ、彼の気転の利いた
 配慮のおかげで
 俺は無事だ、ありがとう」
 
庵に御礼を言われた男は
何て答えていいものか
戸惑っていた。

「良かった、お前が無事で
 ・・・・・・」

安堵する新の様子に、庵と要は
顔を見合わせて微笑む。

新は、声を荒らげて皆に言って
聞かせる。

「この場を借りてお前達に言う
 先代を殺した、タカツキを
 許せない気持ちは、痛い程に
 分かる
 だが、会澤組が間違えた方向
 へ歩まずに済んだのは奴の
 おかげだ、奴がいなければ
 この組は・・・
 亡き親父の、大事にしていた
 会澤組は崩壊していた
 かもしれない、だから言う
 
 金輪際、堅気となった
 タカツキには手を出すな
 わかったな
 それができない奴は
 止めはしない
 今すぐ、組を出て行け」

誰一人、もう二度と新に
歯向かう者はいない。

真実は、庵、要、新

・・・三人の心の奥底

深く、深く、闇の中に。