庵の登場を、今か今かと昨夜
から待ち侘びていた男は言う。

「これはこれは、待ち草臥れる
 ところでしたよ
 それにしても、貴方は
 懲りない人だ
 毎回、一人、もしくは
 少人数で相手の組へと
 乗り込んで来て
 
 利口なのか、馬鹿なのか
 親としての自覚が、貴方には
 全く、無いように思える」

笑みを浮かべる男を、冷めた目
で睨み付ける庵。

「俺はもう、親でも何でも無い
 勘違いすんな」
 
「ほう、そうでしたね
 あの抗争の日から何年も経つ
 というのに変わらない
 貴方の姿が私を混乱させる」

辺りを見渡す庵、そんな彼を
見つめる会澤組の組員達。

「カナメとアラタは
 何処にいる?」
 
男は、声を出して笑う。

「また、それか・・・
 高月組四代目も昨夜
 この場所でそう言った
 どうして、彼と同じ事を
 貴方までもが言う」

『アラタは何処にいる』