飴色蝶 *Ⅱ*

「モエちゃん?大きくなったね
 おトイレは、あそこだよ」

「ママ、付いて来て」

更紗は、菫に赤ちゃんを預けて
娘に付いて行く。

赤ちゃんを上手に抱く菫の傍に
庵は近寄り、赤ちゃんの頬に
指先で触れた。

「かわいいな
 カイリも
 こんなだったの?」

「うん、こんなだったよ
 抱っこしてみる?」

庵は、緊張する腕で
赤ちゃんを抱く。

「小さくて、こわい」

微笑み合う二人・・・

「あっ、16時頃に腹が減って
 皆で弁当食べたけど
 流石に、食べきれなくて
 少しだけ残ってる
 ごめんな・・・
 おにぎり、うまかった」

「本当、良かった」

私達は、数時間前に起こった
出来事に一度も触れる事は無い

まるで

何も無かったかのように・・・