その場に立ち尽くす庵の
握り締めた拳。

菫は荷物を持たない方の手で
そっと触れた。

庵は、菫をその腕に抱く。

「イオリ、ごめん
 ごめんね・・・」

貴方の心の中に、渦巻く葛藤が
私には見える。

だけど、貴方を

行かせてあげること

私にはできない。

「俺は、どこにも行かない」

庵の腕の中で、私は頷いた。

テーブルの上に、手付かずの
ままで置かれたお弁当。

黙々と片づけを済ませる庵達。

それは、今朝と同じ・・・

しかし、明らかに、さっきまで
とは違う空気が漂う。

部屋の中にいた幹生達には
何があったのか分からないが

今の庵には近づいては
いけないような気がした。