飴色蝶 *Ⅱ*

大人達の話に聞き飽きた浬は
リビングのソファーで眠りに
ついている。

食卓には、みんなで楽しく
囲んで食べ終えた空っぽの鍋に
使った食器がそのまま置かれて
いた。

庵はテーブルに肘をつき、煙草
を吸いながらぼーっとその様子
を見つめては何かを考えている

庵の頬に菫は、お風呂掃除で
冷たくなった手をあてた。

「つめたい」

庵は、吸いかけの煙草を
黒猫の灰皿に置き、菫の冷たい
手に触れ、見つめては物寂しい
顔をした。

「イオリ、お願い
 もう、一人で悩まないで
 私は、ずっと貴方の傍にいる
 だから、私に
 何でも話して聞かせて?」

庵は、重い口を開いた。

「すみれ、ここに座って
 ・・・・・・
 近いうちに、この場所を
 離れる事になりそうだ」