飴色蝶 *Ⅱ*

庵が以前に住んでいた部屋は
正二の管理のもと今も
そのままになっていた。

「・・・・・・
 元気そうで何よりだ
 落ち着いたら、あそこも
 引き払う方がいいな
 荷物の整理など一度帰って
 済ませておいてくれ
 
 それが済み次第、こちらで
 手配する」

「はい、すみません」

他人行儀な二人・・・

正二は話を続けた。

「イオリ、お前が仮釈放された
 事は、もう既に会澤組は
 もちろん他の組にも出回り
 皆の知るところだろう
 幾ら、堅気になったとは言え
 お前を良く思ってない奴は
 大勢いる
 会澤組にしてみれば、お前は
 ・・・・・・」

「親の敵」

「そうだ 
 今の組長であるホソヤは
 カナメとは気が合うようで
 お前が親を殺したにも拘らず
 双方の組織の存続の為に
 手打ち盃を受け、あれ以降
 今日まで対立抗争は一度も
 起きてはいない・・・」