そんなある日、庵の元気な姿を
一目見ようと、正二と朱莉が
現われた。

開くドア、庵に会う事への
戸惑いからか、朱莉の足は
靴を履いたまま、玄関先で
一歩も動けなくなる。

そんな朱莉の腰元に、そっと
手を当てる正二、その大きな手
から感じる、愛する人の温もり 

朱莉は気づく、自分が愛して
いるのは正二

庵に会っても、その思いは
変わらない。

「お父さん、シュリさん
 散らかってますけど
 どうぞ」

菫は、朱莉に微笑みかけた。

「さあ、チナツ
 お邪魔しようか?」

「ええ、お邪魔します
 ・・・・・・
 スミレちゃんごめんなさいね
 この人ったら、今朝になって
 急に、イオリに会いに行くと
 言い出して、私が止めるのも
 聞かなくて・・・
 
 スミレちゃん、もしかして
 仕事休んだ?」