飴色蝶 *Ⅱ*

麻子が呼んでも、その男の子
は、菫の洋服の端をきつく
握り締めて、彼女の傍から
離れようとはしない。
 
透馬は、にっこりと微笑む。

「隠れてないで出て来いよ
 カイ
 おじちゃんが肩車して
 やるから、ほら、おいで」

男の子は、やっと姿を見せる。

庵にそっくりな大きな瞳に
見つめられた透馬は
満面の笑みを浮かべた。

すると、その子は菫に
問いかける。

「パパ?」

そう話す男の子こそ

庵と菫の血を分けた息子
浬(かいり)、五歳だ。
後、半年で六歳になる。

菫は、浬の視線に合わせる為
に屈んで、庵によく似た
わが子を見つめて話す。

「カイリ、聞いて
 彼は、マコちゃんの
 大切な人で

 カイリの
 パパじゃ無いのよ」