飴色蝶 *Ⅱ*

菫の瞳には、冷蔵庫内に
陳列された食品が映る。

何も取り出さずにいる
菫の肩に優しく触れる
庵の右手。

彼は、左手で扉を閉めた。
 
そして、菫の肩に両手を乗せて
彼女に言って聞かせる。

「すみれ、聞くんだ
 仮に俺の刑期が十五年とする
 生まれた子供は十五歳になる
 
 きっと、いろんな出来事が
 お前の身に起こるだろう
 いつしか、お前の気持ちも
 変わるかもしれない
 
 その時に俺の事に縛られて
 自分の気持ちを抑えるような
 事だけはやめてくれ
   
 俺の愛が、お前の重荷になる
 のは堪らなく辛い
 俺の事は、いつ忘れてくれて
 も構わない
 
 自分の事を一番に考えるんだ
 自分の幸せを一番に・・・」

菫は、庵の頬を思いっきり
打った。

「本気で言ってるの?」